順調に進んできていた。だが、最後の最後で、オレだけが自分のスタイルを見つけ出せずにいた。
「佐治君、お疲れ。」
「ありがとう。」
最近は、と話す内容も広がり、やはりオレにとっては特別な存在であるという思いが強くなっていた。
それなのに、部活で上手くいかないことが、との時間も楽しめなくさせていた。
「今日は、他校の人が来てたね。」
「ああ、私立帝条高校のサッカー部だ。」
しかも、こんなときに全国大会の常連校、私立帝条のヤツらが来て、余計に焦りが募る。
「あの、うちと同じ名前の学校かー。・・・・・・すごいね!他校に注目されてるんだ、佐治君たち!」
「そんなこと・・・・・・。」
そんなことはない、そう言いかけたが、そんなことはないことないだろう。私立帝条が、うちに見学に来たのは事実なのだから。
だが、メイジも言うように、うちはまだ完成していない。そう、オレが自分のサッカーを見つけられないでいるからだ。
だから、注目されてすごいのは“オレたち”じゃない。すごいのはオレ以外のヤツらで、そして、悪い意味で注目されているのはオレだけだ。
「しかも、すごく綺麗な人も来てたよねー。あの人が監督さん?」
「そうみたいだな。」
「何か、佐治君に話しているように見えたけど、知り合い?」
「知り合いと言うほどでもねェよ。中学の時に、少し会ったことがあるだけだ。」
「そうなんだー。・・・・・・もしかして、佐治君の憧れの人だったりする?」
「そんなんじゃねェって。」
そういう誤解を最もされたくないに、そんなことを言われ、焦りが苛立ちへと変わる。は何も悪くないのに、オレは素っ気なく返しただけだった。
「そ、そうだよね。ゴメン、変なこと言って。」
「いや・・・・・・。」
結局それからとの空気は悪いまま、そしてオレは自分のスタイルを見つけ出せないまま、都大会決勝を迎えてしまった。
しかも、相手に2点も先制され、それでも、オレは目の前のヤツらをまとめられずにいた。・・・・・・オレがトランセンドサッカーを完成させなければならないのに。
そんなことを考えていたが、そうじゃなかった。オレがまとめるんじゃねェ。オレがこいつらに活かされてるんだ。
そう気付かされたオレは、ようやく吏人たちと飛べるようになった。
「佐治君、おめでとう!」
「ありがとな。でも、まだ次に向けて・・・・・・って、?!」
試合後、応援に来てくれていたのところへ礼を言いに行くと、突然の目から涙が溢れ出てきた。
「あ、ゴメン。何だか、感極まっちゃって・・・・・・。」
「いや・・・・・・。それほど、オレたちのことを応援してくれてたってことだろ?」
「それもあるし、試合展開がすごすぎてっていうのもあるし、・・・・・・もういろいろあって、感情が昂ったみたい。」
そう言いながら、は涙を拭った。すぐに拭い切れたところを見ると、本当に、気付けば涙が流れてきていた、というような感じだったらしい。
無意識で涙を流すほどに感動したのは、この試合結果のおかげか?それとも・・・・・・。
「いろいろ・・・・・・?他にもあったのか?」
「うん。あとは、佐治君が格好良すぎたこと。」
まだ少し目を潤ませてはいるが、もう笑顔になって、はそう答えた。
きっと、今までオレが悩んでいたことに気付いてたんだろう。
「・・・・・・悪かったな、最近はちゃんと話を聞いてやれてなくて。」
「そんなことないよ!佐治君は私の話をちゃんと聞いてくれてた。だけど!佐治君は何も話してくれなかった。そりゃ、部外者の私に話したって意味はないかもしれないけど・・・・・・。話を聞くぐらいなら、私にだってできるし。何か、役に立ちたかった。」
真っ直ぐな目でオレを見つめ、そんなことを言う。
大会で優勝したことで、オレは少しいい気になっていたらしい。のそんな言葉に、自惚れた考えしか浮かばない。
「じゃあ、これからは、もっと応援してくれるか?」
「当たり前だよ!佐治君さえ良ければ、私は何でもするから!」
・・・・・・本当、舞い上がるよな。
吏人には、試合結果なんて2秒で忘れろ、って言われるだろうけど。今は、この勝ったという勢いを利用して、気持ちを伝えたい。これで、どういう展開になろうと、オレは後悔しない。
「それじゃあ、・・・・・・。オレと付き合ってくれないか?」
「・・・・・・え?どこに?とか、聞いていい方?それとも、聞いちゃダメな方?」
「ダメな方。もちろん、ウソでも冗談でもないからな。」
「そ、そっか・・・・・・。え〜っと、その・・・・・・。」
そう言いながら、またの目から涙が流れる。
「あー、本当、今日はいろいろありすぎるよ。こんなに嬉しいことが続いて、私、運使い果たしてない?」
「・・・・・・?」
「ごめんね、佐治君。私、前に佐治君目当てじゃない、というようなことを言ってたけど、実は佐治君目当てだったんだ。だからこそ、ずっと応援してたし、天谷君が来る前の佐治君は見てられなかった。」
「そうだったのか。」
「うん。でも、そのときは気になってるって感じかな。本当に好きになったのは、こうやって話をするようになってから。それで、やっぱりいい人だって思って。」
にそこまで言われて気付く。そういえば、まだオレは自分の気持ちをはっきりとは言っていない。
・・・・・・ったく、情けねェな。
「オレも似たようなもんだ。のこと、気になってはいたけど、好きだと思うようになったのは、一緒に帰るようになった後ぐらいだ。だから・・・・・・、オレは誰よりに応援してほしいと思ってる。」
「・・・・・・ありがとう。私も誰より応援したいのは佐治君だから。これからも精一杯応援するね!」
その日は、大会だからサッカー部でまとまって行動しなければならず、オレたちが一緒に帰ることはなかった。でも、これからは互いにとって特別な存在として、共に行動できる機会も増えるだろう。
と思っていたのに。
「やっぱり、佐治目当てだったんだよなァ・・・・・・。でも、ありがとな、さん!佐治のこと頼まれてくれて。」
「だから、頼まれたつもりはないってば。」
「でも、佐治って何つーか・・・・・・、心配になるときあるだろ?」
「あー、わかる。しっかりしてるんだけど、だからこそ、放っておけないと言うか。1人で背負いこんでるんじゃないか、って。」
「そんな感じ、そんな感じ!だから、佐治のことは頼んだ、さん。」
「言われなくても、私は佐治君のことを支えていくつもりです。」
「いいなー、佐治!オレも彼女ほしい・・・・・・!!」
「さん、佐治に飽きたら、オレのとこに来てくれてもいいぜ!」
「あ、ズリィー!じゃあ、オレも立候補!!」
気付けば、はオレの周りのヤツらとも仲良くなっていて、こういうメンバーでいることが多くなった。・・・・・・それはそれで楽しいけどよ。
「オイ、お前ら、いい加減にしろ。を困らせるな。」
「困るのは佐治の方だろー?」
「何だと・・・・・・?」
「ありがとう、佐治君。でも、大丈夫。みんなの提案は嬉しいし、私、困ってないよ?それに、私が佐治君に飽きられることはあっても、私が佐治君に飽きることは絶対ないから。」
オレを含む、以外の全員が一瞬唖然とした。たぶん、コイツらの冗談と同じように返したつもりだったんだろうけど・・・・・・。
「あーあ!こんなノロケられたら余計切なくなってきた・・・・・・。もう帰ろうぜー。」
「そうだな。じゃあな、佐治!んで、さんも、また明日!」
「うん、バイバーイ!また明日ー。・・・・・・・・・・・・楽しいね、みんなと話すのも。」
当のは、笑顔でそう言った。・・・・・・本当、調子が狂う。さっきまで、もう少し2人の時間も欲しいと思っていたのに、にそんなことを言われて、こういう時間もありかと思ってしまう。
「・・・・・・。」
「ん?なあに?」
「さっき、オレに飽きられることはあるかもしれないって言ったけど、そっちも絶対ねェから。」
「・・・・・・うん、ありがとう!」
の言葉に感化され、オレもそんなことを口走る。でも、がさっきよりも嬉しそうだから、言ってよかった、ってことにしとくか。
それと。やっぱり、この笑顔はオレだけのものにしたいから、なるべく、あいつらとと一緒に過ごすのはやめておこう、とも思い直したオレだった。
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佐治さん、マジでカッコイイですよね!!むしろ、連載が終わったことで、捏造しやすくなったので、勝手にイケメンにできちゃいますしね!(←)
でも、連載が終わったのは、本当に寂しかったです;;何だか、心にポッカリと穴が開いた感じでした。掲載順も常に最後で、新たなサッカー漫画も始まりそうだったので、心の準備はしてたハズなんですけど(笑)。
何はともあれ、皆様がどう言われようと、私は『LIGHT WING』が大好きです!(笑)
今回、書いてて、市帝の逆ハーとか、市帝vs私立帝条とか、いっそ、「俺のターン、ドロー!」と言わんばかりに(黙れ)私流“帝デッキ(市帝vs私立帝条vs氷帝)”を構築したいとか、いろいろ妄想しちゃいました♪(←)今後、この中のどれかが実現されてしまっても、温かく見守ってやってください(笑)。
('11/05/26)